『音階とアルペジオ』シリンスカヤ

ハノンのようなメカニック教本です。ロシアでもハノンは
売っておりラフマニノフも使用したそうですが、現在では
他のメカニック教本が使われることが多くなっています。

この『音階とアルペジオ』はハノンと比べて、実際に
ピアノ曲を弾く際に役立つパッセージが多く含まれて
います。ハノンではユニゾンで下から上降し、折り返して
下降してくるパターンが殆どですが、実際のピアノ曲の
多くはもっと複雑な動きをします。

『ピアノのABC』グネーシナ

同じ名前の教則本が日本でも出版されていますが、
こちらはエレーナ・グネーシナ(グネーシン音楽院の
創設者の一人)が書いた導入教材です。

指を速く動かす事に重点を置かず、タッチの使い分け、
フレージング、音を聴く事を集中して学びます。
導入期にこういったピアノ奏法の基本を身に付けるか
どうかで、その後の伸びが変わってきます。
長年経験のある方の復習に使用する事もあります。

『ショパン ワルツ集』ネイガウス&ミルシュテイン校訂

運指は、弾きやすさとニュアンスの出しやすさから
決められますが、この版は特に後者が素晴らしいです。
パデレフスキ版、エキエル版、春秋社版などと比較して
みても、特に第1番(華麗な大円舞曲)はこの運指が
ベストだと思います。詳細な解説付き(ロシア語のみ)。

ショパンの版の選択は、ショパンの祖国ポーランドですら
意見が分かれています。定番の版に加え、この版も参考
にする事をお勧めします。

『バッハ オルガンの為の小プレリュードとフーガ』
カバレフスキー編曲

バッハのオルガン曲のピアノ編というと、平均律の後に
トッカータを弾くかどうかという位置付けの方が多く、
私はバッハのオルガン曲がもっと親しまれて欲しいと
思っています。

カバレフスキーが数曲をピアノ曲に編曲したものがこの
楽譜です。各曲数ページで難易度はシンフォニア終了〜
平均律の3声程度。オルガンらしい朗々とした響きを
楽しめます。ブゾーニ編曲のトッカータを弾く前段階にも
有用です。

『バッハ 平均律第1巻』メルジャーノフ校訂

モスクワ音楽院ピアノ科の最年長教授メルジャーノフ氏
校訂の楽譜。非常に癖のある版です。私はここに書かれ
てある事をそのまま弾く事はありませんが、「なぜこう
書かれたのか?」という視点で楽譜を見ていくと、今まで
見えていなかったものが沢山見えてくる版です。
第2巻はまだ発売していません。

留学中、当時85歳のメルジャーノフ氏のリサイタルを聴く
ことが出来ました。音楽院大ホールの一番後ろの席に
座った私にも、彼の音楽の存在感の大きさと暖かさが全身に伝わってくる
ショパンのプレリュードを今も忘れません。

追記
去る2012年12月20日逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げますとともに
心よりご冥福をお祈りいたします。

※もちろん他の国の楽譜も使用します。

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