審査員から見た「通る演奏」とは

「なんでこういう結果なの?自分の予想と違う!」
結果発表後にそう思ったことがある方もいらっしゃると思います。
では、審査員は何を聴いて点数をつけているのでしょうか?
コンクールによっては、審査項目を要項に載せているものも
ありますが、審査の際には通信簿のように全ての項目を均等に
チェックして審査するわけではありません。

コンクール当日に向けて参加者は皆、練習を積み良い状態に
仕上げてきますから、ただ上手「弾く」だけでなく、いかに
「聴かせられるか」が重要になってきます。
たとえ子どもであっても、聴き手を意識した、舞台映えする
演奏であるかが評価のポイントとなってきます。

客席に聴かせる演奏

自分が弾く事に精一杯になっていませんか?
コンクールであれ、ホールの聴き手と音楽を共有する事に
変わりありません。

舞台上のピアノのすぐ側にいる弾き手と、
離れた客席の聴き手では音の聴こえ方が違います。
右画像を見れば分かる通り、客席と舞台は
とても遠いです。 審査員席の場所は前方とは限らず、2階席前方の場合もあります。
審査をしていると、この距離による聴こえ方の違いを認識していない、教えられて
いないであろう参加者が多く見られます。

普段の練習やレッスンは部屋で行われますから、本人(特に子ども)が
ホールでの演奏を自発的に認識するのは難しい事です。
これは指導者が自身の演奏経験を元に指導していく事項であると思います。
強弱、ペダリング、音色と音の出し方、数曲弾く間の集中力など、部屋と
ホールでは異なります。
コンクールに向けて、こういった点を重点的に指導致します。

ミスをすると落ちるの?

ミスの何がいけないかと言うと、そこで音楽の流れが止まる事です。
ミスした事で動揺し、そこで集中力が途切れると、聴き手にも
それが伝わります。本番ではミスしても、平然と弾き続けましょう。

これは他の審査員が仰った講評ですが、審査員はそのミスが
たまたまなのか、実力不足が原因のミスなのか、緊張のせいの
ミスなのか判断出来ます。
例えば、他の部分は良く弾いたけれど、1ヶ所指が滑って音が擦れた
と言うパターンは「たまたまのミス」に当たり、ほぼ減点はされません。

「ミスした人が通って、ミスしなかった人が落ちた」という時は、大抵
通った人のミスは流れを止めない程度の「たまたまのミス」だった事が
多いのです。逆にミスはなくても音楽の流れや表現に不足があれば
高い評価は得られません。

CDと同じ演奏をしなければいけないの?

市販のCDや課題曲CDの通りに弾かなければ通れないと思って、
CDの演奏をコピーしたかのように弾く参加者もいます。
課題曲CDには
「このCDの演奏は解釈のひとつであり、模範演奏ではありません」
という内容の断り書きがあるのですが…。

曲には何通りもの解釈が存在します。
CDと同じでなくても妥当な解釈ならかまわないのです。
例えば劇的に和声が変わる箇所があるとして、その変化を
どんな方法で表すかは人それぞれです。その方法が審査員が
弾く時と違っていても、前後の流れや様式から考えて妥当ならば、
大抵相応の点が付きます。CDと同じでないと・審査員の弾き方と
同じでないと点が付かないわけではありません。

聴いたものをそのままコピーする習慣が付いてしまうと、
CD化されていない曲を弾く時に困る事になります。CDは
参考としてお聴き下さい。

inserted by FC2 system